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ゆりゆりぐさ

要するにブログだな。

今井康絵さんの短編ホラー漫画を読んで

読み物

前回のエントリーで「世界で一番怖いのは人間じゃ」という感じの記事を書かせていただきましたが、そんな私がハマって読んだ、あるホラーマンガがあります。

それは、少女向け漫画雑誌『ちゃお』のホラーコミックス向けに描かれた短編集です。作者は今井康絵先生。

本気で怖いホラーは見聞き出来ない私ですが、その漫画は怖さもちょうどよく、さらに誰もが深く考えさせられる内容を含んでいるので、ぐんと引き込まれました。

 

特に心に残った短編を、2つほど紹介させてください。

見てはいけない (ちゃおホラーコミックス)

見てはいけない (ちゃおホラーコミックス)

 

まずは、こちらに収録されている『顔』

とある小学校の、男子が美少女をもてはやす風潮のあるクラスが舞台。特にブサイクだとからかわれていた女子が、ある日突然、見違えるような美少女になって登校してくる。「お前そんなに可愛かったっけ?!」と、急に彼女をチヤホヤしだす男子。

するとそれを皮切りとして、クラスの女子が次々と可愛く変身していく。気がつくと主人公の少女以外、みんな同じ顔、同じブランドの服。

どんどん苛烈になる可愛さ競争のひずみは溜まり、やがて主人公にも牙をむく……。

 

この短編のテーマは「価値観に振り回される怖さ」「画一化の怖さ」といったところでしょうか。価値観に振り回されず、自分らしさを大切にすることを、極端な形ではありながら教えてくれている気がします。

全員同じ顔の少女たちが「お前の顔をつぶしてやる!」と追いかけてくるシーンは、まさに狂気のそれですね。

 

もう1つ。

私の中に悪魔がいる (ちゃおホラーコミックス)

私の中に悪魔がいる (ちゃおホラーコミックス)

 

こちらのコミックスに収録されている『私ではない私』

街頭ビジョンが設けられたとある町に暮らす、町一番の優等生の少女が主人公。

誰にでも挨拶をし、町の人々皆から慕われる主人公だったが、そんな彼女の実名と顔写真が、ある日のニュース番組スタッフの手違いで、凶悪殺人犯の画像として公開されてしまう。

すると町の人々は「子どもで実名報道されるんだから、よほどの凶悪犯だ!」「あれだけムキになって否定するなら間違いない!」「悪い奴を殺せ!これは正義だ、手段を選ぶな!」と、態度を豹変させて主人公に襲いかかる……。

 

この短編は「皆が情報を鵜呑みにする怖さ」がテーマのようですね。テレビで伝えられることが絶対だと信じ込み、自分で考えることを放棄することがいかに危険か。

私自身が、この作品内で怖いものとして描かれている人々にならないように、気をつけたいものです。

まあ、最近はメディアに対する不信感をつのらせている人も多いようですから、そういう人にとっては呆れしか感じられない内容かもでしょうが(笑)

 

 

世界で一番怖いかもしれない人間は、どんなお化けよりも怖い存在でもあるのかもしれない。今井先生の短編ホラーは、背筋の凍るような衝撃を持って、人間の抱える狂気とのつきあい方を教えてくれています。