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ゆりゆりぐさ

要するにブログだな。

とある悪役に捧げる空想手紙

あなたは5年前の今日、任天堂Wii用ソフト『ゼルダの伝説スカイウォードソード』で、鮮烈なデビューを果たされましたね。
そのゲームは、ゼルダの伝説シリーズ25周年記念作品という位置づけで発売され、それまで続いてきたゼルダの伝説シリーズの「始まりの物語」を描くというものでした。
あなたはそんな『スカイウォードソード』の中で、封印された魔王の復活を企てる謎の青年として私たちの前に立ちはだかりました。
歴代シリーズの悪役としては珍しい、線の細くて中性的な容姿が目を引いたあなたですが、いざ蓋を開けてみると超ド級のナルシストだったり、変態呼ばわりされても致し方ない言動が多かったり、あげく物語の終盤では、儀式と称した捨て身のダンスまで披露して。
こちらの世界には「残念なイケメン」という言葉がありますが……ええ、申し訳ないことに私は、あなたほどその言葉が似つかわしい人を他に知りません。


しかし、私はある日気づいたのです。
あなたは本当は、世界中の誰よりも一生懸命で、誰かを一筋に思い続け、そして孤独と悲しみを湛えた人なんだと。
スカイウォードソード」には幾つかのキャッチコピーが存在します。その中の一つが「大切な人の、助けになりたい」でした。それは主人公だけでなく、ヒロインにも、ゲームに登場する多くの人物にそれが言える。それがこのゲームの物語。
無論あなたもそうです。
あなたの場合、助けになりたいのは自分の主……封印された魔王様。
しかし、あなたの野望は再三にわたって、勇者をはじめ多くの妨害を受けてきました。私だって、そうして妨害した一人。
そして魔族たちの長という立場上、プレイヤーでもある勇者とちがって誰にも頼ることが出来ない。手下の魔物たちしかいない。ある意味で一人ぼっちのあなたの旅路は、いつも怒りと憎しみの中にあったのかもしれないと気づいたのです。
とても想像を絶する苦境のはずなのに、私たちの前ではいつもお高くとりすましていたあなた。一体その胸中には、どんな苦しみがあったのでしょう。
勇者とあなたは、きっと紙一重。
なのに、見る者の違いで、どうしてこんなに遠く隔てられてしまったのでしょうか。


それでも最終的にあなたは主である魔王を復活させ、己の使命を成し遂げるのです。その魔王も、最後は勇者に討ち取られました。
あなたの主は言いました。「これは終わりではない、始まりなのだ。勇者と魔族の戦いは、悠久の時の果てまで輪廻をえがく」と。それが、始まりの伝説であるこのゲームの結末。
それからというもの、魔族たちは長い歴史の中で何度も神の国ハイラルを脅かし、勇者たちとの戦いを繰り返しました。時折そんな歴史の中に姿を現す、魔王の復活を企てたと伝わる者たちの中に、私はどうしてもあなたの影を探さずにはいられないのです。
私の世界でも、人はみな平和な世の中を願いながら、どこかでいじめや殺人、戦争、悲しみや憎しみが絶えません。
人間がいなくならない限り、善と悪の戦いは終わらないのでしょうか。
それは、私の生きるこの世界も、あなたが主である魔王様に捧げたかったそちらの世界も同じなのでしょうか。


おっとと、暗い話ばかりですみません!
それにしても、その後のあなたの活躍は目覚ましいものがありましたね。3年後の2014年には『ゼルダ無双』でプレイキャラとして参戦したり。『大乱闘スマッシュブラザーズfor3DS/WiiU』ではアシストキャラクターとして少しだけですが登場したり。
早いもので、今年はゼルダの伝説シリーズ30周年ですって。今年はその記念にと、色々なことがあっているみたいですよ。
ただ少し残念なのは、昨年夏に任天堂の岩田社長がお亡くなりになってしまったこと。一緒にゼルダ30周年をお祝いしたかったなぁ。彼の下でWiiが世に送り出されなければ、あなたが存在しなかったかもしれないんですから。


あちらの世界にとっては大事になりそうですが、私はきっと、あなたとまたどこかで会えるような気がしています。
それでは、あなた様の益々のご健勝を心よりお祈りいたしております。


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魔族長ギラヒム様